母ちゃん　へ

とうとう出発の日が来ました。母ちゃんの元気な顔を見て行けないのが残念です。　・・・・・　

中学校へ入学してから毎日、上級学校へと希望を抱いておりましたが、落ち着く先は結局飛行兵になります。

この大戦争をしているのに、五年も六年も学校生活をしているよりは、一刻も早く御国につくしたほうがよいと思いまして、この道を選んだのです。決して間違っていないと信じます。もう国一の体は、御国のものです。

幼い時から今まで、やさしく育てて下さった母ちゃんに、何一つお仕えすることが出来なかったのが、唯一の心残りです。しかし、御国のためになるようにするのが、結局は母ちゃんへの孝行になると思います。

では母ちゃんが一日も早く全快されて、元気になられることをお祈りしております。早くよくなって、面会に来てください。首を長くして待っております。

訓練中の事故で亡くなった予科練生が、土浦海軍航空隊に入隊前に母親に送った手紙です。

彼の名前は、菊池　国一（福島県出身）

昭和１８年４月１日：第１２期海軍甲種飛行予科練習生として土浦海軍航空隊に入隊　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　昭和２０年３月１２日：伊予灘において夜間雷撃訓練中に墜落　公務死（７０１空所属）２０歳

現在小さな展示室では、上記手紙を展示中です。母が子を想い、その子がまた母を想う気持ちが短い文書ではありますが切々と書かれています。是非雄翔館を訪問されて実物をご覧ください。